新春対談 いま未来への展望を語ろう |
元全教委員長 三上 満
和教組執行委員長 雑賀 光夫
和教時報 第1678号 (2002・1・10号)より教育は希望を育むこと
希望とは三つのもの(自分・人間・明日)への信頼から
雑賀 明けましておめでとうございます。
昨年は、国民に痛みをおしつける小泉内閣の登場、教育に「奉仕活動」を持ち込み、教育困難を「指導力不足教員」の問題にすりかえる「教育改革三法案」の強行、年末確定では、かつてない賃金攻撃がかけられました。「テロと報復戦争」で日本国憲法が踏みにじられるという大変な事態になっています。こういう時だからこそ、未来への展望を語ることが大切だと思っています。
昨年は、海南市で開かれた県教研集会に三上先生においでいただきました。そのとき、子どもたちの元気な南中ソーランや一〇〇人の大合唱とともに、お母さんの報告に感動しました。給食を守る運動に取り組んだお母さんが「給食の三拠点方式は強行されたけれど、わたしたちは大きな財産を残した。子どもたちに最良のものをという立場でがんばっていきたい」と報告されました。三上先生は、「お母さんは、私が一番言いたかったことを言ってくれた」と前置きして講演していただいたのでしたね。
三上 その後、和歌山市の教育相談センター一〇周年の集会にも呼んでいただき、小学校四年生から潔癖症で不登校になった女性が一〇年かかって立ち直った体験談や登校拒否・ひきこもりから少しづつ居場所をみつけ自立しつつある息子を語るお母さんの話を聞きました。
いつの時代にもまして先が見えない、汚水に囲まれた中で、しかし、自立した人間になりたいと生きていく若者たちの姿…。
いまの世の中について同じことが言えるのではないでしょうか。不況とリストラ、小泉「構造改革」……労働者・国民がひどい目にあわされています。でも、不登校の子どもたちが自立する力を蓄えているように、国民の中にマグマのように怒りと世の中をよくする力が培われているように思います。
教育は希望を育むこと、希望とは三つのもの(自分・人間・明日)への信頼から生まれるものです。
雑賀 厳しい情勢の中でも職場の仲間ががんばっているから希望と信頼も生まれるんですね。署名を集め、組合員をふやしながら賃金攻撃を一定押し返した年末闘争でもそう思いました。
学校の原風景は三原色
雑賀 ところで二〇〇二年度を前にして「開かれた学校」、どんな学校を作るのかということが問われると思いますが…。
三上 最近、私は「学校の原風景はシンプルな三原色だ」というのです。@ほめるAしかるB子どもの味方になる。
都知事選挙に出たとき、悪たれだった子どもたちが応援にきてくれて、語ってくれたことで教えられました。
「石川啄木を石川五右衛門と書いたら、石川の部分を残して半分点をくれてうれしかった」とか「今度やったら知らないぞときびしく言われたのが忘れられない」とか…。
そのためには、子どもの「あら探し」からの脱却が大事ですね。
まんざらじゃない自分との出会い
雑賀 私は、青年教師のころは何度も教師をやめたいと悩んだことがあるし、体罰をしてしまった苦い経験があります。若い先生へアドバイスがあればお聞かせください。
三上 私は子どもの成長には、四つの出会いがあると、よくお話しします。@自分の至らなさとの出会いA喜んでくれる人との出会いBこんな人になりたいという憧れの人との出会いCまんざらじゃない自分との出会い。
先生だってそうでしょう。ベテランの先生だって、いまの子どもを前に途方にくれる。
「子どもは発展途上人だ」と言うんですが、若い先生だって「発展途上」だからこそ若い先生としての魅力がある。
そして、子どものどんな小さな成長でも子どもや保護者とともに喜びながら、成長していくわけでしょう。
それを「まんざらじゃない」と励ますような教職員集団があることが大事ですね。「指導力不足」だとプレッシャーをかけ、「研修」で追い立てても、若い先生は育つものではありません。
雑賀 いま、学校に自由に悩みや喜びを語れる雰囲気を作ることが組合の大事な仕事ですね。
本日はお忙しい中ありがとうございました。