第1638号(2000/6/5)HP掲載記事
一七才の少年事件と「教育勅語」
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一七才の少年事件と「教育勅語」
和教時報 第1638号 (2000・6・5号)より
一七才の少年による愛知の主婦刺殺事件と西鉄の高速バスのっとり事件。 愛知の中学生による 五四〇〇万円もの恐喝事件。 その後も、 よく似た事件が続いています。
こうした問題は、 単純に因果関係を云々することはできません。
それにしても 「日本の極度に競争的な教育制度が、 子どもの発達に障害をもたらしている」 と 国連の子どもの権利委員会が警告を発したのは、 一昨年の五月のことです。
一七才という年齢は、 私たちが白紙撤回をもとめてきた、 現行の学習指導要領のもとで学校生 活を送った子どもであることも見逃せません。
さらに、 子どもたちが希望をもてない、 政治・経済・文化の腐敗といった、 社会の病理現象と いう問題も、 私たちが指摘してきたところです。
森首相は、 この問題について戦前の教育勅語を持ち出しました。 教育勅語というのは 「夫婦相 和し」 夫婦は仲良くしなさいなどとも言っていますが、 その結びは 「一旦緩急あれば義勇公に報 じ」 つまり、 「一旦戦争になったら天皇陛下のために死になさい」 というものです。 だから、 新 憲法下の国会で、 廃止が決議されたのです。
いま、 子どもたちに命の大切さを教えなくてはならないときに、 教育勅語を持ち出し、 「日本 は天皇を中心にした神の国」 だといったわけです。 なんということでしょう。
私たちの和歌山県国民教育研究所が、 県下一〇〇の小中学校の協力を得て、 一二、〇〇〇人の子 どもアンケート調査を実施しました。
「どういう大人になりたいか」 という設問には 「家族を大切にする人」 と多くの子どもたちが回 答している一方、 「夢のある社会だと思わない」 と答えている児童が、 小学生で四二・二%に達し ています。 子どもの願いに大人社会が応えられていないといわざるをえません。
私たちは、 子どもを主人公にした学校づくりをすすめるとともに、 競争の教育をあらため、 ま た、 子どもたちが希望をもてる世の中にする努力をしなくてはならないと痛感します。
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