和教時報

第1633号(2000/4/5.15)HP掲載記事

新年度 私が大事にしたいこと
・学級びらきにあたって
・年度当初の抱負
・日に一度は話をしよう
・子どもをはぐくむやさしさを
・中学校担任として大事にしたいこと
・新年度に子どもと向き合う私のやりかた
新執行委員長挨拶
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新年度 私が大事にしたいこと


和教時報 第1633号 (2000・4・5・15合併号)より

 さあ−、新学期だ。何年教師をやっていても新しい子ども達との最初の出会いは、胸のときめき を感じるものです。「どんな子どもがいるのかなどんなクラスにしようかな」と考えながら教室ヘ ……。クラスは子ども達の基本的な生活の場。それだけに子ども達が、もっとも影響をうける場で もあるわけです。
 ですから、ベテランの先生でも、クラスづくりに頭を悩ませながら力を注いでいます。書物を読 んだり、研究会に参加することはもちろん大切なことですが、何よりも毎日の教育実践が大切です。 ベテランの先生方に、そのとりくみのいくつかを語っていただきました。



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学級びらきにあたって

東牟婁 勝浦小学校 楢原祐子

 十年前に山の小さな学校に転任してから、なんと八年連続で一年生ばかり担任しました。一年生 というのは全く特殊で、入学式で学校びらき、更に学級びらき、一日で、子どもたちが小学校はお もしろくて楽しくてワクワクする所だという強いインパクトを与えないといけません。おまけに第 一回目父母参観日をもかねています。そのために、担任の名前をアクロステックで紹介。紙芝居や 絵本の読み聞かせ等、しました。中でも、手品は一番好評で、親も子も目を輝かせて見てくれまし た。いろいろな技をもっておくと役に立つと思います。このような教師のパフオーマンスは皆、こ とのほかよく覚えてくれています。
 「将来は魔法使いになりたいのよ。そのために今、修行中なの」
というと、うけました。先生は「おもしろい」と思ってくれるのが第一です。
 去年度は、久しぶりに五年生を担任しました。学級びらきは、第一号の学級通信を添えて。「やさ しい心」(仲間を大切にすること)
 「かしこい頭」(自分の頭は自分で鍛える)
の二点を強調して話したと思います。その後ほんの読み聞かせをしました。五年生ともなると、 「なあんだ小さい子みたいに本ら読むん」とばかにしたようなことを言う子もいましたがかまわず 読みました。ユーモアがおもしろくすぐに続きの本を!と催促されました。
 講談社 木村裕一作「あらしのよるに」「あるはれたひに」「くものきれまに」「きりのなかで」 の四冊です。もしかしたら続編が出ているかもしれません。以来、わたしの読み聞かせる本には一 目置いてくれています。
今年度は持ち上がりです。今、持ち上がり学級の学級びらきをどうしようかと悩んでいます。


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年度当初の抱負

内海小学校 角下麻人

悠太
ぼくはいつも学校の帰りが楽しみだ。
家に帰れるからもあるけど,ほとんどがK君と帰るのが理由。
ぼくは,自分の家かおばあちゃんの家に帰る。
でも5年になって自分の家に帰ることが多くなった。
だから,K君と帰るのが少なくなった。でもK君と帰るのは楽しい。
通った人をおもしろく想像していく。
だから歩くのもおそくなる。
6年になっても,K君と帰りたいな。

 自分が小学校のころ,一番何が楽しかったか。それは、学校の行き帰り。学校まで歩く道々の時 間でした。何が楽しかったかって、悠太君と全く同じ,その道々でアレコレと夢のようにいろいろ 思い浮かべる時間がすてきだった。
 でも,学校はあまり好きになれなかった。
 4年生のころ,「1年の始まりは何月ですか」と先生が質問した時のこと,みんな手を挙げた。
 当然ぼくも手を挙げたが,向こうの子が当たり、「1月です」と答えた。みんなは「同じです」 と答えた。その時,ぼくはあっけにとられた。
 「どうして?1年の始まりは4月なのに。学校は4月の桜から始まるのに」と、桜の花びらが目 の前で散るような思いだった。
 人前で話すことなど思いもよらなかった自分。ひどい赤面症で、発表するなんてとんでもなかっ た。勇気を奮って発表しようとして,答えを聞いてびっくりした自分。
 きっと,先生はぼくの考えていることなど分かりはしないだろう。そして、分かったら「なるほ ど」とは言わず、「ちがいます」と言うだろう,そう思った。そして,「どうせぼくの考えること なんて間違いだらけなんだろう」と思った。だから、学校にいることはあまり好きになれなかった。

 教師として年度当初,いつも浮かんでくる思い出を胸に,「学校楽しいで。勉強おもしろいで。」 「人はしばしば過ち犯すのよ!」「失敗したらやり直したらいいんや。なんも難しくないで」「や ってはいけないのは,仲間を裏切ることよ」と,ぼくは自分に言い聞かせるのです。


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日に一度は話をしよう


 春四月、新しい学級を受け持つ気持ちは、二十数年教師をしていて毎年変らない。子ども達への 期待と多少の不安の入りまじった複雑な気持ちである。これは生徒も全く同じであろう。毎年、最 初のホームルームで、学級づくりのため手を変え品を変えて話すのであるが、その中で毎年きまっ てする話がある。
 「毎日一度は先生と話をしよう。」うれしいこと、腹立つこと、家庭でのこと、野球の話等なん でもよい。話題がなければ「先生、今日は寒いなあ」これだけでよい、君らから話しかけてこい、 先生からも声かける。
 とても簡単なことだが、中学校ではこれがなかなかむつかしい。一年生全員にとなると大変な約 束である。しかし、教師と子どもがお互いを知り合うため、まず心を開き合わねばならない。場合 によっては学級集団へ投げ返してやれば良い。
お互いに気取らず正味の話をと願っているが、むずかしいものだ。
もうひとつ、これは教師の宣告である。「君らの本職は勉強だ、良いことをしたらほめる。悪い ことをしたらおこるぞ。」
現実には色々の非行に悩まされながらの忙しい日々であるが、多くの子どもたちのあの晴れやか な春の顔に元気付けられ、がんばりたいと思っている。
(中学校教員・民研「月報」より)


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子どもをはぐくむやさしさを


 「二十四の瞳」に憧れて、教師になって毎日毎日が無我夢中のうちに、早くも七年が過ぎ去った。 ところで、最近「やさしい先生になるよう努力しよう」と決意した(これを聞けば私を知っている 人は笑うでしょう)「やさしい、なんで……」と「やさしさ」をバカにしていた時もあった。しか し近頃、つくづく「やさしさ」の大切さがわかってきた。それだけにむずかしさも感じている。
 教室で子ども達の顔をみればガミガミ、ブツブツ。これは案外やりやすい。でもこんな状態で、 子ども達は果して「やる気」が起こるだろうか。学級(学校)というのは、教師が全面的に引っぱ っていく所ではなく、ある程度糸口をみつける手助けをしてやっても、後は子ども達が力をふりし ぼって取りくんでいってこそ、彼らの実力となり得るのではなかろうか。要は子ども達に奮起させ ることだろう。「子ども達自身が、何かやってやろう、と奮起する。それを見守り、失敗しそうな 時は手助けしてやれる」そんな「やさしさ」を私は本当に身につけたい。
(中学校教員・民研「月報」より)


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中学校担任として大事にしたいこと

紀見東中学校 吉田政忠

 新学期を迎え、子どもも新たな気持ちで学校生活を送ろうとしています。その子どもの気持ちを 大事にしながら、教育実践を進めたいと思うのは教職員共通の願いではないでしょうか。
 ただ最近気になるのは、いままでの中学生は、ほとんどが新学期には期待に胸ふくらませていま したが、最近はどの学年でも、何人かは学校がおもしろくない、不安だと感じている生徒がいるこ とです。
  また中学校3年間は、思春期という人生の中でも激動の時期でもあり、人格形成にとってもも っとも大事な時期でしょう。
 子どもだから許される数々の失敗や挫折を克服し、成長する子どもの姿を目の当たりにできる喜 びと、反面、なかなか生徒とうまくいかない現実とのギャップや、とにかく目前の子どもと関わら なくてはならない忙しさが、中学教師の今日の苦悩を生み出しているのではないでしょうか。
 やらなければならないことはたくさんありますが、一年間の実践や失敗を振り返って、あらため て大事にしたいことを、自分なりにまとめてみました。

(1)子どものシグナルをきっかけに。
  大人や教師の想像以上に、今の子どもの人間関係が不安定で希薄になっていて、子どもが集団 の中で萎縮(?)してしまう傾向が、よく見られます。学級や集団の中で起こっている子ども間の 問題は、ほとんど大人や教師に伝わらないと考えていいでしょう。
 だからこそ、毎日の子どもの生活状況や態度・表情から子どもの発するシグナルを感じ取ること が大事になります。 この一年間、クラスの生徒で、
 @連続して、遅刻や欠席(連絡あり)・早退するようになった生徒
 A授業の集中力がなくなった生徒
B制服のボタンがはずれたり、服装が汚れている生徒
がいましたが、遊びと称して暴力的ないじめを受けていたり、仲良しグループから阻害されていた り、父親が単身赴任で子どもの精神状況が不安定になったりしていました。
 このような生徒は、日常的によく見られるだけに注意だけで終わったり、見逃しがちですが、お かしいなと感じたら、その時点で事実や原因が分からなくても子どもに声かけすること、親と連絡 をとり、家での子どものようすを聞いたり相談することで、問題解決を早めることになりました。

(2)子どもとの意図的なコミュニケーションの機会を。
  職場の多忙化とともに、授業の中のやりとりや注意・聞き取りのための会話の機会しかなく、 子どもとじっくりはなす機会がなくなり、子どもの世界でも会話が少なくなっています。意図的に、 子どもを丸ごとつかめるような工夫が必要です。
 @清掃の時間にいっしょに活動をしながら、子どもの話の輪の中にはいる。
 Aグループ面談で、子どもの人間関係をつかむ。
 B懇談週間や期間を決めて、懇談の時間をとる。

 どれもこれも、誰でもがやっている実践だと思いますが、基本的なことをじっくり積み重ねるこ とによって、今日の中学生が抱えている問題点を解決する実践理論や方法を整理し、深めることが できると思います。


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新年度に子どもと向き合う私のやりかた

竜神小学校 鈴木晶子

 毎年、桜の花が咲くころになるととてもわくわくした気分になります。新しいスタートを切る喜 び、そして子ども達との出会いがきっとそんな気持ちにさせてくれるのでしょう。
 そして、今年はどんなことをしてみようか・・・と考えるとまたわくわくしてくるのです。
 アイデアを出していろんなことにチャレンジするのが私は大好きです。自分も楽しくて子ども達 も楽しんでそれに付いて来てくれるから。でも、どんな楽しいことをするのにもその土台となる基 礎基本が必要です。
 私は毎年、何年生を担任してもどんなクラスを担任してもいつも次のことを心において子どもと 接するようにしています。
「躾はきびしく、指導はやさしく、学校はたのしく」これは随分前にお世話になったある校長先生 から教えていただいた言葉です。それを年度始めの学級懇談会で一年間の私の方針としておうちの 人たちにも聞いていただくようにしています。
 大勢の子ども達を躾るというのは大変なようですが、「先生の話は背筋を伸ばし手をひざの上の 置いて顔をしっかり見て聞くこと」という約束を一番最初にしておくと案外他の躾もうまくいくも のです。
・元気よくあいさつができるように
・名札をつけて登校できるように
・人の話はしっかり聞けるように
・人に悪いことをしてしまった時は「何がどう悪かったのか」を言って謝れるように
・全体で行動する時もきちんとできるまでやり直させる
・ノートの字は丁寧に書けるように・・・ 等々
他にもたくさんありますが、これらのことをできるまで何度でも繰り返し指導します。
 でも、うまくいかなくとも大声を出したり怒ったりはしません。大声や怒鳴り声は決して人の心 を揺さぶることはないと思うから。そして、大人にとってどんなにつまらないことであっても、あ たりまえのことであっても、子ども自身が自分を守るための言葉であったとしても、子どもの話は 最後まで相槌をうって聞いてやります。そうすると子どもは必ず一歩心を近づけてきます。そして、 指導した限りは必ず後でその評価をしてやるのです、誉めることに重点をおいて。このように子ど も達にはできうる限りやさしく接したいと思っています。
 こうして子どもとの信頼関係を築き躾をきちんとしておけば、大体は一年間平和に過ごせます。 いろんな楽しい計画は、こうした基盤の上にあってこそ子ども達とともに考えられることだと思う のです。一日のほとんどを学校で過ごす子ども達にとって、学校はいつも楽しくほっとできる場で なくてはなりません。「今日は一日楽しかったね。」とみんなが言えるようなクラスにしたいと願 いつつ、毎年わくわくしながら新しい年度を迎えています。


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新執行委員長挨拶

要求がビンビン伝わる組合に
雑賀光夫
和教時報 第1633号 (2000・4・5・15合併号)より

 今年から執行委員長の大役をお受けすることになりました。  「職場から支部・本部まで、 組合員のみなさんの要求が、 ビンビン伝わってくる組合にしたい」 これがモットーです。
 いま、 教育現場ではベテランの先生でもとまどうような問題がいっぱい。 だから悩みが語り合え る職場にしなければなりません。 組合支部や本部の事務所でも、 「今日はこんなうれしいことがあ ったのよ」 「こんな問題があるんだけど、 どうしたらいい?」 など、 職場での悩みやよろこびがい っぱい持ち込まれるようにしたいものです。

 年金大改悪がまたも強行されたというニュース。 生活を守るために力を合わせることが、 ますま す大事になっているということを強く感じます。 憲法調査会、 教育基本法見直し………。 無関心で はいられません。

 わたしたちの賃金や権利にしても、 先輩のみなさんの長いたたかいで実現してきたものです。 こ れからも力を合わせて、 平和と民主主義、 生活と教育をまもっていこうではありませんか。


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