月報

1999年12月号HP掲載記事

親子で楽しむ手作りサークルです
住金公害に悩む住民の立場に立って
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子育て・周辺からの提言

      親子で楽しむ手作りの算数サークルです

那賀算数サークル・コスモス
川口恵美

月報 1999年12月号より


 このサークルは、一九八七年九月、那賀郡の先生の算数・数学サークル「ちっちりこ」 からの呼びかけで、お母さんたちが何人かでやってみようと発足しました、以後月一回の ペースで公民館を借りて、長年、算数教育に携わってこられた石原正夫先生を兵庫県の西 宮市からお迎えして、毎回テーマを決めて算数を水道方式で学んでいます。
 水道方式とは一般には聞き慣れない言葉ですが、言葉の由来は「水源地から水道を通し て各家庭へスムーズに水が流れるようだ」ということから、水道方式という名前がつけら れました。SUIDO METHODという名前で、現在、国際的にも評価を得ています。
 すべての国民の願いである「子どもたちに分かって質の高い算数数学教育」をめざして、 多くの学者・教師・学生・父母による研究と実践が今日もなお積み重ねられています。 (「数学で育ちあう会」作成資料から)
 私たちがサークル全体でとりくんだ活動を紹介しますと「一万個のいちご作り」「一周 年記念文集作成」「巨大風船作り」「三原色の絵の具箱」「平均」「体積」「全円扇作り」 「ペガサスのしきつめ」です。また、個人向けに製作した手作り教材では「パタパタタイ ル」「かけわり盤」「倍数めがね」「コンドルのしきつめ」などです。この中では、先生 のサークル「ちっちりこ」との交流をもたせていただき製作したものもあります。
 さきほどあげた活動の中で、「体積の実験」について少し説明しておきます。

 

「体積」ってどんなこと?の勉強会


 「体積」ってどういうこと?と夏休みに子どもたちとお母さんたちとで実験をしました。
 大きいポリバケツに満杯の水を入れ、その中にゆっくり子どもが入り、あふれ出た水の 量がその子どもの体積で、残った水位を調べます。三人の子どもで行いました。体重はち がうがだれがたくさん水がこぼれるのだろう。次に野菜の体積です。水槽にカボチャ、サ ツマイモ、キュウリ、リンゴなどを入れてやってみました。それぞれの野菜の重さの差に 比べ、水面の高さが予想外だったことに驚きました。
 そして最後に本当に体積は重さに関係があるのかということで、本物の真空パックの豆 腐とセメントを流し込んだかなり重い豆腐を水槽に入れ、比べてみました。結果は二つと も同じ水位だったのです。これも驚きです。そして体積は「物がとる場所の大きさ」であ り、「物の体積は水の体積におきかえられ」、「体積は重さに関係ない」ということを、 手や足や体を使って知りました。子どもたちは実験の際「何かおもしろそう」「おもしろ い」と感じ、予想をたてたりと表情は生き生きしていました。
 現在、十二名のお母さんたちが『私たちの算数』というテキストを中心に勉強していま す。対象が小学生を中心に二才位から高校生まで、幅広く子育て全般の話題にも及んでい たり、また参考図書の紹介もあります。
 このサークルは、難しいと思われがちな算数を日常生活の中で実感し、子どもたちに伝 える手段として、とても参考になっています。また、親が安心して子どもの成長を長い目 で見る気持を大切にしたいと考えています。


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住金公害に悩む住民の立場に立って

九鬼嘉蔵

月報 1999年12月号より


 私は、四十八年間、和歌山市議会議員を務めさせていただきました。一応、保守系無所属議員と 目されてきたと思います。保守であれ革新であれ、一番大事なことは、地域住民の立場にたつこと だという信念でやって参りました。
 私の地元には住友金属和歌山製鉄所があります。私たちは、戦争中、お国のためにと住金の工場 用地を供出させられたのです。戦後も住金は地域住民の犠牲で大きくなったのに、「その住金に裏 切られた」という思いが強いのです。松江地区の住民は、住金の粉塵公害に悩まされて来ました。
 いま、私たち松江地区住民がとりくんでいるのは、住金が公害源を沖だしするために公有水面を 埋め立てたものを、LNG火力発電所建設のために関西電力に売り渡すということは許せないとい う問題です。私たちは、住金が各種公害を沖だしする目的で、公有水面埋立免許の取得(昭和五五 年六月免許)することに賛成し、同意してきました。ところが住金は、埋め立て完了が迫ると、埋 立免許条件(工場の沖だし移転)の変更を和歌山県知事に申請、同時に埋立を完了した第二工区を LNG火力発電所用地として関西電力に売却することを発表したのです。
 これによって公有水面埋立の目的は、一八〇度変更されたことになります。公害を沖だし・移転 するどころか、新たな公害源となるLNG火力発電所を設置することになります。また、沖だし移 転の跡地にグリーンベルトとして居住区との分離空間を設ける計画も「幻」に終わらせました。
 公有水面は、われわれ地域住民の、かけがえのない財産です。ことに瀬戸内法は、水質汚濁防止 のために埋立を厳しく制限しています。もしLNG火力建設を当初の目的として埋立を申請した場 合、許可を得ることができるでしょうか。ましてや、製鉄所の都合で産業廃棄物等を埋立資材とし て使用し、只(無料)同然でできあがった土地を、なれあい価格(九〇〇億円と言われている)で 売買したとなれば、全くの土地ころがしではありませんか。公有水面が金になるという神話の誕生 です。
 市民を公害から守る最後のとりでは、公害紛争処理調停申請制度です。私たちは、平成九年七月 七日、公害紛争調停申立てを行いました。私たちの申立は、
「a沖だし移転の実行。
b移転までの間、煤塵一平方キロメートル当たり四トン以下。騒音、振動を規制値以下にする。
c移転跡地の緑地化。d被害の補償。という内容でした。
 ところが、和歌山県公害調停委員会では、相手方住友金属は誠意を見せないばかりか、審査打切 りの決定をおこなおうとしています。
 本年九月二九日に県医務課による人口の動態統計では、和歌山県の呼吸器系ガン死亡率は、一〇 年間全国第一位となっており、しかも増加傾向にあると発表されています。こうした疫学的考察だ けでも、公害の存在が明らかな問題になっているのに、委員会において、住友金属は住民の被害に 目をつぶろうというのでしょうか。
 私たちは、私たちの子どもや孫のために、そして地球を生き物の生き続けていける美しい星とし て残せるように、さらなる司法手段に訴えてでも、また市民運動として、市民連帯の中で問題解決 のために全力をつくす決意です。
 (元和歌山市議会議長)


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